大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)
共同通信社ワシントン支局次長、「汐留鉄道倶楽部」執筆者
2022年は日本の鉄道開業150年という大きな節目となり、待望の西九州新幹線が9月23日に部分開業したエポックメーキングな年となり、鉄道旅行でも新型コロナウイルス禍からの反転攻勢が目立ってきたことを「鉄旅オブザイヤー」への意欲的な応募作品の数々が伝えてくれました。応募商品は思い入れが強い企画ばかりで、新型コロナ感染を防ぐために参加者の健康管理に細心の注意を払いながらも、素晴らしい旅行体験を提供するために様々な工夫を凝らしたことがよく分かりました。いずれも甲乙つけがたい優れた商品ばかりで、例年と同じくですが非常に苦慮しながら審査をしました。
一例として、鉄道開業150年記念と銘打った費用150万円の豪華ツアーが参加者の高い満足度を得たことは、本物志向の顧客体験を提供できる旅行会社の真価を改めて示しました。また、地方の第三セクター鉄道会社を訪れる鉄道愛好家向けの旅行商品や、アイドルグループのメンバーと交流できるツアーは、ただでさえ少子高齢化と過疎化で経営が苦しい上に、新型コロナ禍が追い打ちをかけた三セク鉄道および沿線地域にとって干天の慈雨になったと確信しています。
私が現在駐在している米国では新型コロナワクチンの接種が進んだのを背景にマスクを着用しない人も増え、経済活動の正常化が進んできました。一方、日本でアフターコロナの動きが本格化するにはもう少し時間がかかるのではないかと推察しています。
ただ、日本政府は23年5月8日から新型コロナの感染症法上の位置づけを現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」へ引き下げることを決めており、23年度にはいよいよ本格的なアフターコロナ時代を迎えるのではないでしょうか。
23年度は全国津々浦々へ向かう幅広い鉄道旅行が催行され、消費支出の拡大を通じて地域経済、および日本経済をさらに押し上げることを強く期待しています。そうした動きの原動力となる鉄道・旅行業界の皆様のますますのご健勝をお祈りするとともに、誠に微力ながら23年度も審査員として鉄道旅行のますますの活性化と発展の一助になれれば幸いです。
(米国首都ワシントンより)