今年一番の大感動旅鉄がここに集結 鉄旅 OF THE YEAR
2021 審査員メッセージ

芦原 伸
芦原 伸(あしはら・しん)
(一般社団法人) 日本旅行作家協会 専務理事
「旅と鉄道」名誉編集長

コロナ禍の影響だろうか、今年の作品には日本列島を縦断するようなダイナミックな企画に乏しく、地域を重視する傾向が見られた。地方の民俗、芸能、地産の食材といった地域文化の深まりとと同時に鉄道旅行も潤色され、いささか小粒でもピリリとスパイスの利いた作品群に仕上がった観がある。
非常事態、蔓延防止もいう制限があるなかでも、人生を豊かにする旅は終わらない。
かつて敗戦に際して、天皇陛下の玉音放送があったが、そんな非常事態のなかでも列車は時刻表通りに走っていた、と書いた紀行作家・宮脇俊三のエッセイが思い出された。
『旅鉄web』
井門 隆夫
井門 隆夫(いかど・たかお)
(株)井門観光研究所、高崎経済大学地域政策学部観光政策学科教授

10年を越え、人気デスティネーション(北海道、三陸、四国、九州)やテーマ(被災地支援、連結、貸切、車両基地や引込線、一人旅、自治体との協業)も定番となってきた中でも、毎年オリジナリティを凝らした作品が多く、審査をするほうが刺激を受けています。 70年代から50年間、旅の手段が鉄道からマイカーへとシフトした期間だったかと思います。しかし、少子化や脱炭素といった流れの中で、50年間観光市場を支えてくれた団塊の世代からデフレ世代へとバトンタッチするに伴い、旅のモードは再び鉄道へと回帰する機運を感じます。
また、旅行会社の事業モデルの存続も危ぶまれていますが、時代は発展的に回帰します。一度萎んだエスコート型など、新しいツアーの企画や販売手法が根づけば、ふたたび新・旅行会社モデルが誕生していくと思います。SNSをメインチャネルにした商品なども来年あたりは出てきそうな予感がします。
井門観光研究所
旅の手帖
五十嵐 匡一(いがらし・きょういち)
月刊「旅の手帖」編集長

昨年度から今年度にかけてはコロナ禍のなか、ツアー企画も制限があったり、お客さまが集まらなかったりと大変だったかと思います。だからこそ企画内容でお客様を惹きつけて、どうしても行ってみたいと思ってもらうようにしなければいけない、ということが大切だったように思います。
そんな背景もあったためか、どの企画も例年以上に練られたもののように感じました。
鉄道会社だけではなく、航空会社、バス会社などとのコラボレーション、またオンラインというコロナ禍だからこその企画も魅力的でした。
『交通新聞社』
榎本 聖之
榎本 聖之(えのもと・きよゆき)
バー銀座パノラマ渋谷店オーナー

まだまだ気の抜けない、厳しい状況が続いていますが、今回の審査資料を見ていても「中止」や「延期」の文字を多く目にし、先を見通しづらい毎日に苦労は絶えなかったと思います。
それでもこの状況に立ち尽くすのではなく、感染対策の徹底や、どうすれば安全に旅行ができるのか、プロ達が英知を結集し、安心して私たちが旅に出られるメニューを提供・提案し続けていることに、皆様の仕事への情熱と誇りを感じました。
この「鉄旅オブザイヤー」を通じて、普段は裏方に回り日々旅行者を楽しませている皆様の努力が広く知れ渡ることを願わずにはいられません。
バー銀座パノラマ渋谷店
オオゼキタク
オオゼキタク
シンガーソングライター

観光のあり方として、傷ついた街を潤して自らも癒やす「観光復興」というアプローチがあるということを、この鉄旅オブザイヤーで学んできました。
コロナ禍にあってはもはや地域に限らず、こうした取り組みを求めているのではないでしょうか。今回の作品はどれも心動かされるものばかりでした。
少しでも早く、安心して旅ができる世の中が戻りますように。今回も楽しませて頂きました!
オオゼキタク Official鉄道ブログ
大塚 圭一郎
大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)
共同通信社ワシントン支局次長、「汐留鉄道倶楽部」執筆者

「新型コロナウイルス禍の長いトンネルを抜けると楽園であった」。
そんな明るい前途が、鉄道旅行にも影を落としてきた新型コロナウイルス禍の先に待ち受けていることを願わずにはいられません。
トンネルの出口から差し込む一筋の光に映るのが、2021年度の「鉄旅オブザイヤー」の旅行会社部門への応募が83件と前年度の2倍近くになり、参加者の健康管理に細心の注意を払いながらも、独創的で充実した内容のツアーが多く寄せられたという事実です。
通常は走らない行程の貸し切り列車を走らせたり、人気ゲームの世界を満喫できたり、“工場萌え”の世界にいざなったりして顧客を意欲的に開拓するツアーが目立ち、逆境の中でも参加者に喜んでもらおうと知恵を絞るツアープランナーら関係者の皆様の心意気を垣間見ることができました。
また、新型コロナ禍による訪日外国人旅行の蒸発で観光地に大きな打撃を受けている中で、旅行会社が日本人消費者を送客したことは地域経済に福音をもたらしています。
そうした社会的意義や背景も踏まえて採点していると応募商品のいずれも甲乙つけがたく、非常に苦労して審査をしたのが実情です。
22年度は新型コロナ感染者数が下火になり、鉄道旅行も本格的な攻勢に転じるアフターコロナ時代の幕開けになるのではないかと希望に胸を膨らませています。
今年9月23日に西九州新幹線の武雄温泉(佐賀県)―長崎間が暫定開業するなど鉄道の明るい話題も待ち受けており、22年度ははるかに明るい気持ちで意欲的なツアーの数々を審査させていただいていることを強く願っています(米首都ワシントンより)。
汐留鉄道倶楽部
栗原 景
栗原 景(くりはら・かげり)
フォトライター

今回も、とても興味深い作品ばかりで、点数をつけて順位をつけるのがつらく感じるほどでした。
引き続きコロナ禍にあって制約が多い中、魅力的な作品を次々とリリースされる旅行会社の皆さんに心から敬意を表します。
鉄道はダイヤや車両が決まっているため、鉄旅は「毎度おなじみ」の作品が増えそうなジャンルでもあります。
そんな中、近年は「オリジナル御城印」ですとか、「女性限定ひとりの贅沢」ですとか、個性的なアイデアが増えているように感じます。
コロナ禍はきっともうすぐ明けます。
2022年度も、魅力的な鉄旅作品がたくさんリリースされることを楽しみにしています。
栗原景オフィシャルブログ
崎本 武志
崎本 武志(さきもと・たけし)
江戸川大学社会学部現代社会学科 教授

「線路は続くよどこまでも」という歌があるが、JRと第三セクター鉄道とのポイントが無くなったり、JRと私鉄線との相互連絡列車の運転がなくなるなど、日本の鉄道では「線路は続いていないよどこでも」となっているのが実情である。鉄道の利用に関するソフト面ではICカードの普及でシームレス化が実現しているのに対し、車両連絡などのハード面では経営体制の区別化や安全性の確保のためとはいえ、隔絶している印象を受ける。
そんな環境下であるが、今回の鉄旅オブザイヤーでも旅行会社各社の皆様のご尽力により、感染症拡大の逆風をもろともせず「線路は続くよどこまでも」を地で行く秀逸なツアーが数多く誕生した。
これらを企画された旅行会社の方々と鉄道各社および沿線関係者の方々のご尽力に敬意を表したい。分断された日本各地の鉄道が再び続くようになるには、外部作用をなす旅行会社や観光客と、鉄道各社や沿線地域との啐啄同機(そったくどうき)こそが大切であることを再認識した。
やはり「線路は続くよどこまでも」を成し遂げるのはひとなのだ。そんな思いを強くした、今年の鉄旅オブザイヤーであった。
鉄旅ガールズ
鉄旅ガールズ
鉄道旅行好き女子

今年は前年の「どうにも動きがつかない…」という状況から、状況を鑑みつつも楽しめることを模索した商品が多く見られ、個人的にも勉強になった。
コロナ禍での工夫は今後も必要であろうし、造成は苦労すると思うが、絶対に途絶えない「旅を楽しむことを続けたい」というニーズを掬い、苦難の観光業界を救い、感動を提供するお手伝いを続けてほしい。
鉄旅ガールズの会議室
南田 裕介
南田 裕介(みなみだ ゆうすけ)
鉄道好きマネージャー(株式会社ホリプロ)

感染対策という最重要課題をクリアしつつ旅の満足度をあげるという命題をしっかりとクリアした作品ばかりでした。バスを上手につかったり、定員を少なくしたり、私たちからは計り知れないご苦労があったのだとおもいますが、作品にはその苦労を決して見せず、前むきなメッセージがこめられています。
旅というもの、鉄道というもの、鉄道の旅というものの持っている癒し効果というか勇気づけ、励まし効果を引き出してる作品が勢ぞろいしてて、パンフレットを見ているだけでいろんな感情がこみあげます。
いつになるか旅を思いっきり楽しめる時期は必ず来るでしょう。それまで旅の楽しさをしっかりとひきつけて行きたいと思いますし、みなさんもそうあってほしいと思います!ありがとうございました
南田裕介オフィシャルブログ
豊岡 真澄
豊岡 真澄(とよおか・ますみ)
元祖鉄道アイドル、ママ鉄代表

コロナ禍で制限や対策などどこの会社も大変だったと思います。
そんな中でも参加したお客さんの喜ぶ顔、わくわくした様子が伝わって来るツアーが数多く見られました。
引き続き、楽しいツアーたのしみにしています!
豊岡真澄オフィシャルブログ「ママ鉄・豊岡真澄の連心通心」
矢野 直美
矢野 直美(やの・なおみ)
旅をしながら「撮って書く」フォトライター

今回も素晴らしいツアーばかりで、どれも実際に参加したくなりました。
鉄道とその沿線の魅力、そしてその鉄道が存在する土地の風土が盛り込まれた素敵なプランの数々は、さすが旅行のプロフェッショナルたちの力と技と感じ入りました。新型コロナウイルスの影響が大変な中、その対応を考えながらの素晴らしい企画、そしてだからこそのオンラインツアーもありました。
テーマを絞ったとても個性的な企画、親子で参加できるツアー、女性限定の旅など、さまざまな旅のスタイルの提案に、鉄道と旅が持つ可能性、公共交通と地域との親和性を改めて感じていました。
矢野直美公式HP