今年一番の大感動旅鉄がここに集結 鉄旅 OF THE YEAR
今年一番の大感動旅鉄がここに集結 鉄旅 OF THE YEAR
第14回鉄旅オブザイヤー 審査員メッセージ
山口 昌彦
山口 昌彦(やまぐち・まさひこ)
月刊「旅の手帖」編集長
鉄旅オブザイヤーも14回となるのにこのバリエーション!
鉄道をテーマにさまざまな組み合わせで無限大にふくらむ世界を感じさせてくれました。

自動車メーカーや航空会社といった異業種との協力、昨年の新幹線プロレスにも対抗しうるインパクトのゾンビ新幹線、そして地域の復興をテーマにした企画。
今年は非鉄誘引力が全体的に高く、鉄道力の裾野の広がりが印象的でした。
オンラインを生かしたものもあれば、対面・アナログだからこその企画も。

鉄道の楽しんでもらうための価値をどう創造していくか、
そして何をどう組み合わせて誰に何を頼んでいくか、
旅行会社皆さまの「あの手この手」が感じられて、
鉄道旅の未来が楽しみなります。
井門 隆夫
井門 隆夫(いかど・たかお)
國學院大學観光まちづくり学部教授
14回目にして感じた点は、宿泊単価が上がっているため、宿泊商品のコスパが悪く感じられる点です。宿泊事業者側も入込に応じて食事場所や内容を変える等の工夫をしている様子が見受けられますが、鉄道だけではなく宿泊の魅力も加算していかなくては、輸入冷凍食品満載の料理を出し、宿泊費を削るだけの単なるコスパ競争に陥ってしまいます。その点、コスパがよい商品が上位に来る評価も変えていく必要があるのではないでしょうか、鉄道だけではなく地域の魅力を伝えるには、旅行商品単価を上げ、説明をする努力も必要になってきています。鉄旅参加者のシニア化も進み、これまで通りの客層だけではおそらく尻すぼみになっていくように思います。一方で、海外のサステナブルトラベルのオペレーターの企画する商品はCo2削減のため航空を使わず、鉄道中心に組み立てられていますが、単価はおそらく日本人向けの2倍以上。厳しいことを申し上げ申し訳ないのですが、日本人シニアや家族といったコスパ追求型客層ばかりではなく、鉄旅に様々な価値を感じる新たな客層に向け、シフトチェンジをしていく時代が来たと感じます。
(例:Intrepid Travel https://www.intrepidtravel.com/en/japan)
榎本 聖之
榎本 聖之(えのもと・きよゆき)
バー銀座パノラマ渋谷店オーナー
これだけ情報が溢れる世界は、旅の形も多種多様な途方もない組み合わせとなり、かえって旅の楽しさを見失ってしまう可能性すらあるのではないかと思うぐらいです。
だからこそ旅のプロである旅行会社の皆様が作り出すツアーの数々が、旅を愛する人々の良き道しるべとなると信じています。
これからも私たちが気付いていない旅の楽しさを伝え続けて欲しいと思います。
オオゼキタク
オオゼキタク
シンガーソングライター
今回は「ここでしか体験できない」旅という目線で選ばせて頂きました。ただ楽しむだけじゃなく、学ぶ、知る、見つける。新たな価値を見いだすことも、旅の可能性の一つなのかなと感じました。どの作品も甲乙つけ難く、旅づくりのプロである皆様の取り組みはどれもスタンディングオベーションです。これからも僕達に、今まで知らなかった旅のよろこびを教えて下さい。ありがとうございました!!
大塚 圭一郎
大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)
共同通信社経済部次長、鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」執筆者
2024年度の第14回「鉄旅オブザイヤー」への応募作品は、新型コロナウイルス禍を過去に葬り去ったかのように「リアル開催」の魅力を存分に生かした甲乙つけがたい力作ぞろいで、審査に大変苦労しました。前任地のアメリカの首都ワシントンでしたためた前回(第13回)の審査員メッセージで1年後の様子を「誠に微力ながら審査員の1人としてとても感心しながら審査し、採点に大変苦労している」と予想していた通りになりました。
そのように大変迷いながらも審査で重視したのは、「旅行のプロ」ならではの鋭い視点を生かした企画で、顧客満足度を高めるように工夫を凝らしており、旅行の持つ社会的使命を体現したツアーであるかどうかという点でした。
それらを具現化しつつ、前回のメッセージで「能登半島地震で大きな被害を受けてしまった石川県などの観光を盛り上げるツアーも強く望まれます」と記していたのに見事に応えてくれたのがクラブツーリズムの「がんばろう 能登半島復興応援ツアー」。このため「DC部門」での最高得点を付けました。しかしながら、DC部門で一次審査を通過した他の2つのツアーで乗車した「あいの風とやま鉄道」(富山県)の「一万三千尺物語」、JR九州の「36ぷらす3」も好きな観光列車だけに、ともに首位との得点差はわずか1点でした。
また、東急スポーツシステム/TSSキッズツアーの「伊豆急行アドベンチャーツアー」は父親の1人として、スマートフォンやゲーム機といった「デジタル」や「バーチャル」を娯楽だと捉えがちな子どもたちにリアルで経験する貴重な機会を提供したことを高く評価して「エスコート部門」で最も高い得点を付けました。
一方、「パーソナル部門」と「鉄ちゃん部門」は、自分も参加してみたい旅行だという視点から選出しました。
25年度の第15回も誠に微力ながら審査員の1人として、「さすがは旅行のプロ」だとうならされるような企画力の高い商品や、私も含めた鉄道愛好家の関心に強く応えてくれるようなツアー、そして能登半島地震を含めた自然災害の被災地の復興を後押しして元気づけるような企画が寄せられることを強く期待しています。それが実現し、1年後に再び「とても感心しながら審査し、採点に大変苦労している」と想像しつつ。
栗原 景
栗原 景(くりはら・かげり)
フォトライター
第1回から審査をさせていただいておりますが、今回はますます個性ある作品が増えてきたように感じます。以前うまくいかなかった作品を、創意と努力によって人気作品に生まれ変わらせたり、「鉄ちゃん向け」ツアーでも、地域の魅力に気づいてもらうようなプログラムが実施されたりと、一層厚みが増してきました。一種の閉鎖空間である「列車」を活かしたパフォーマンスをしたり、環境に優しい鉄道の特性に注目したりと、ジャンルがどんどん広がってきたと思います。正直なところ、年々審査が難しくなっていると感じます。2025年も、楽しく、学びがあって、環境に優しい鉄旅をご提案してくださることを楽しみにしています。
崎本 武志
崎本 武志(さきもと・たけし)
江戸川大学社会学部現代社会学科長・教授、日本国際観光学会 会長
ここ10年間の間に、日本では各地で未曾有の自然災害に襲われている。さらに、インフラ設備の老朽化が原因となる災害も発生した。鉄道も例外ではなく、これからは国土強靭化を含めて補強が必須となる。その中で、災害から立ち上がり、見事に復興果たした鉄道が、地域に、観光客に、勇気と希望を与えている。これからの日本は「がんばろう」と互いに激励し、応援する、ナマの推し活が重要となって来るであろう。そういった中で、「鉄旅」の果たす役割はまさに日本のインフラへの推し活であり、「鉄旅オブザイヤー」に参画する各ツアーの存在意義は非常に大きいと考える。これからもより多くの鉄旅が登場し、鉄道というインフラの「推し」となっていくことを望みたい。
櫻井 寛
櫻井 寛(さくらい かん)
鉄道フォトジャーナリスト、東京交通短期大学客員教授
初めて審査員となりましたが、どのツアーも充実の内容で、点数を付けるのに苦慮しました。鉄道力という点では、例えば、北海道の稚内発、九州の枕崎行きのキハ40形2両編成の列車を走らせることはできないものでしょうか?JR会社では難しいでしょうが、旅行会社の企画なら可能だと思います。
豊岡 真澄
豊岡 真澄(とよおか・ますみ)
元祖鉄道アイドル、ママ鉄代表
今回の最終リストに残ったツアーを見て、地域を応援する、支えたいという想いが伝わってくるものが多かったです。日本という中にこんなにも素晴らしいところがあるんだとアピールするものが多く、グッときました。
南田 裕介
南田 裕介(みなみだ ゆうすけ)
ホリプロ鉄道好きマネージャー
今回の作品も多種多様でした。
かなりエッジの利いた作品も登場し、度肝を抜かされました。
また、歴史的車両の引退のイヤーともなった2024年。どういう花道をつくるか。
混乱を避け、安全第一で、なおかつ思い出に、そして一番大事な収益をげること。
どれも欠けると、ツアーはその意味を成しません。様々な制約や困難に打ち勝ち、実施に至り、旅を終えたときの感動は生きてゆく糧になるはず。
その感動は参加者にも伝わってます。そしてもっと良いツアーを造成し、成功してという+のサイクル
そんな+サイクルの軸に鉄道がいることへ感謝。

もう今年度は始まっています。
どんな作品が誕生するのか、楽しみです
矢野 直美
矢野 直美(やの・なおみ)
旅をしながら「撮って書く」フォトライター
今回もすべてが魅力的なツアー企画で、三陸や阿蘇、能登半島への応援ツアーが多かったのにも胸を打たれます。「エスコート部門」は団体旅行ならではのアイデアが盛りだくさんで、「パーソナル部門」は個性的で一人参加も楽しそう。「DC部門」にはそれぞれの地域の魅力が詰まっていて、どの部門も素晴らしい内容で審査に迷いました。なかでも今回は特に「鉄ちゃん部門」が、「鉄道好きの、鉄道好きによる、鉄道好きのための鉄旅」といった趣があり、審査していてとても楽しかったです。