2024年度の第14回「鉄旅オブザイヤー」への応募作品は、新型コロナウイルス禍を過去に葬り去ったかのように「リアル開催」の魅力を存分に生かした甲乙つけがたい力作ぞろいで、審査に大変苦労しました。前任地のアメリカの首都ワシントンでしたためた前回(第13回)の審査員メッセージで1年後の様子を「誠に微力ながら審査員の1人としてとても感心しながら審査し、採点に大変苦労している」と予想していた通りになりました。
そのように大変迷いながらも審査で重視したのは、「旅行のプロ」ならではの鋭い視点を生かした企画で、顧客満足度を高めるように工夫を凝らしており、旅行の持つ社会的使命を体現したツアーであるかどうかという点でした。
それらを具現化しつつ、前回のメッセージで「能登半島地震で大きな被害を受けてしまった石川県などの観光を盛り上げるツアーも強く望まれます」と記していたのに見事に応えてくれたのがクラブツーリズムの「がんばろう 能登半島復興応援ツアー」。このため「DC部門」での最高得点を付けました。しかしながら、DC部門で一次審査を通過した他の2つのツアーで乗車した「あいの風とやま鉄道」(富山県)の「一万三千尺物語」、JR九州の「36ぷらす3」も好きな観光列車だけに、ともに首位との得点差はわずか1点でした。
また、東急スポーツシステム/TSSキッズツアーの「伊豆急行アドベンチャーツアー」は父親の1人として、スマートフォンやゲーム機といった「デジタル」や「バーチャル」を娯楽だと捉えがちな子どもたちにリアルで経験する貴重な機会を提供したことを高く評価して「エスコート部門」で最も高い得点を付けました。
一方、「パーソナル部門」と「鉄ちゃん部門」は、自分も参加してみたい旅行だという視点から選出しました。
25年度の第15回も誠に微力ながら審査員の1人として、「さすがは旅行のプロ」だとうならされるような企画力の高い商品や、私も含めた鉄道愛好家の関心に強く応えてくれるようなツアー、そして能登半島地震を含めた自然災害の被災地の復興を後押しして元気づけるような企画が寄せられることを強く期待しています。それが実現し、1年後に再び「とても感心しながら審査し、採点に大変苦労している」と想像しつつ。